介護施設(介護業)における問題社員の対応方法を弁護士が解説

1 はじめに

介護業の運営において、著しく能力の低い社員や指示・規則を守らない問題社員にお悩みの介護業の事業主の方は多いと思います。

特に、正社員は一度採用すると、なかなか解雇ができないため、問題社員にどのように対処すべきか、悩ましいところです。

そこで、本記事では、当事務所から、解雇したい問題社員の対応方法について解説します。

基本的な対応方法を知っておくだけで、問題社員に対する普段からの接し方も変わってきて、事業所のコンプライアンスの観点からも良くなると考えています。

2 介護施設(介護業)における問題社員とは

問題社員としては例えば、以下のような方が挙げられます。

・普段の勤務態度が極めて悪い

・職務遂行能力に著しく欠けており、指導しても改善が期待できない

・周囲の社員などと良好な人間関係を築くことができない

3 介護施設(介護業)における問題社員の特徴

⑴ 勤務態度が極めて悪い問題社員

勤務態度が悪い問題社員は、例えば、遅刻や無断欠勤が多い、明らかに業務の手を抜いている様子がある、業務時間中にも関わらずプライベートなことを行う、周囲へ挨拶をしない、ご利用者やご家族への接し方が失礼である、などが該当します。

⑵ 職務務遂行能力が著しく欠けており、改善も期待できない

介護の実務能力や専門知識が欠如し、利用者に対して適切なサービスを提供できず、指導しても反発してしまう、などが該当します。

もちろん、誰にでも多少の失敗・ミスはありますので、仕方のないこともあります。

しかし、ミスしても、本人に努力の姿勢が見られず、上司から何度指導しても一向に改善がみられない場合は、問題社員といえます。

⑶ 良好な人間関係を築けない

パワハラ、モラハラ、セクハラといったようにその社員の言動に問題があるため、社員同士や利用者との人間関係を良好に築けず、周囲との間に軋轢を生んでしまう、などが該当します。

 

4 介護施設(介護業)における問題社員を放置するリスク

介護施設(介護業)の事業主として、問題社員を放置するリスクは、例えば以下のものが挙がられます。

・利用者様やご家族様からのクレームで、他の社員に負担がかかってしまったり、事業所自体の評判が下がり、利用者の減少につながってしまう

・問題社員からのパワハラ等で、他の社員が精神的に病んでしまい、離職に繋がってしまう

・問題社員への対応を放置すれば、事業主に対する他の社員の不満が溜まり、他の社員のモチベーション低下を招く

5 介護施設(介護業)における問題社員の対応方法

⑴ はじめに

解雇したい問題社員がいるの対応方法としては、いくつかの手段が考えられます。

・退職勧奨

・雇止め

・懲戒解雇

・普通解雇

⑵ 退職勧奨

退職勧奨とは、事業主側が社員に対して、自主的な退職を促すことです。解雇とは異なり、あくまでも社員が自らの意志で退職することを勧めることですが、法的効力はないものです。

退職勧奨の注意点としては、やり過ぎると退職強要と見なされる可能性があることです。退職のための説得を長時間続けたり、必要以上に繰り返すと、その行為自体がいじめなどとみなされてて、損害賠償請求をされる可能性もあります。

あくまで、力ずくで辞めさせるのではなく、あくまでも本人の自主的な意思を尊重するという姿勢がポイントです。

⑶ 雇止め

 雇止めとは、有期雇用契約の社員を期間満了によって契約を更新せずに止めることです。契約社員やアルバイト・パートなどは、雇用する期間を定めた契約であるため、期間が満了して契約を更新しないという対策を取れば、その時点で原則として雇用関係は終了することになります。

⑷ 懲戒解雇

懲戒解雇は、事業主が社員に対して行う懲戒処分です。

懲戒処分には、戒告、減給、出勤停止、降格などいくつも種類がありますが、事業所によっての就業規則に定めを置いているかと思います。この懲戒処分の中で、最も重い処分が懲戒解雇です。

具体的には、横領・着服、経歴詐称、利用者に対する虐待などの重大な違反が発覚した場合に、懲戒解雇をできる可能性があります。

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ただ、注意点としては、懲戒解雇のハードルはかなり高いですので、きちんと根拠をもって行わないと、社員側から、不当な解雇であるとして主張される可能性が高まります。

懲戒解雇について明白な理由と、それを立証するための十分な証拠を提示できなければ、裁判になった際に、懲戒解雇は無効であると裁判所に判断される恐れがありますので、注意が必要です。

⑸ 普通解雇

普通解雇は、社員が雇用契約上の職責を果たせない時に、事業主側で社員との契約を終了させるものです。具体的には、著しい能力の不足、長期の就業不能状態にあること、就業規則違反にする等を理由として行われることが多いと思います。

もっとも、懲戒解雇と同様に、解雇が無効となるリスクがあります。労働契約法16条では、解雇が成立するには「社会通念上相当であると認められるだけの合理的な理由」が必要となります。しかし、この理由が裁判所に認められることのハードルは高いと認識していただく必要があります。

⑹ まとめ

以上からしますと、現状では、問題社員を解雇等することは簡単ではないといえます。

それだけ、社員の雇用上の地位は、労働法などの法律で守られていますので、問題社員に対する対応は簡単ではありません。

6 介護施設(介護業)における問題社員対応の注意点

事業主側が問題社員を解雇したい場合でも、無視したり、暴言を述べたり、不当な配置転換命令行うことは問題ですし、行き過ぎた退職の強要も行うことも止めたほうが良いと言えます

あくまでも自主的な退職を勧める「退職勧奨」自体は、違法ではありません。しかし、相手が明らかに拒否したにもかかわらず、何度も繰り返してしまうと、退職強要で違法とされる可能性が出てきてしまいます。

ケースや問題職員の生活によっては、執拗な退職強要により精神的被害を受けたとして慰謝料等の損害賠償を請求される可能性もあります。さらに、退職強要のことが外部に広まってしまえば、事業所全体のイメージダウンとなり、今後の人材採用に悪い影響となります。

7 弁護士法人リブラ共同法律事務所がサポートできること

上記で解説したとおり、事業主側において、問題社員を解雇したり、退職してもらうこと簡単ではありません。

場合によっては、不当な解雇として訴訟を起こされてしまい、事業主側に高額な賠償責任が発生するリスクもあります。

問題社員に対する対策としては、普段から問題社員の就業状況について客観的な証拠や記録を残しておいて、解雇するにせよその理由となる根拠とその証拠を示せるようにしておくことが大切です。

その際ですが、ご自身たちだけで証拠を集めようとするのではなく、具体的にどんな情報を集めるべきか、また、どんな証拠として残すべきかについては、事前に弁護士に相談したうえで対応することをおすすめします。

また、解雇無効などの訴訟を起こされた場合でも、適切な対応方法のアドバイスを行うこともができます。訴訟になると内容の専門性が高まりますし、慎重な対応を求められますので、弁護士に相談すべきといえます。

当事務所は、介護・福祉分野に注力した弁護士事務所となっております。もし問題社員の対応などについて悩んでいらっしゃいましたら、当事務所までまずはお気軽にご相談ください。

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