介護施設と個人情報保護が問題となった事例②

1 はじめに

  介護施設内で、個人情報について問題となったことはないでしょうか。

  高齢化社会の進展に伴い、介護施設は高齢者の生活を支える不可欠な存在となっています。しかし、多くの利用者の極めてデリケートな個人情報を取り扱うため、その保護と管理は施設の信頼性、ひいては利用者の安心に直結する重要課題です。ひとたび個人情報が外部に漏洩すれば、利用者本人や家族に多大な精神的・経済的被害を及ぼすだけでなく、施設の信用失墜、ひいては経営危機にも繋がりかねません。

 本記事では、介護施設における個人情報の取り扱いについて問題となったケースについて紹介します。

2 介護施設と個人情報保護:多数の漏洩事例から学ぶ教訓

実際に、介護施設における個人情報漏洩の事例は後を絶ちません。

例えば、数年前、ある介護施設で、職員が個人的に使用していたノートパソコンに多数の利用者情報(氏名、住所、病歴、家族構成など)を保存し、そのパソコンを紛失した事例がありました。

この情報には、数百人規模の利用者の個人情報が含まれており、結果として多数の情報が外部に漏洩する事態となりました。紛失したパソコンにはセキュリティ対策が不十分であり、パスワード設定もされていなかったことが判明し、施設のずさんな情報管理体制が浮き彫りになりました。

3 個人情報保護の対策について

 このような多数の個人情報漏洩が発生した場合、その影響は計り知れません。利用者やその家族は、自身のプライバシーが侵害されたことに対し、強い不安や怒りを覚えることになります。また、施設側は、漏洩の事実を公表し、関係者への説明や謝罪、再発防止策の実施に追われることになり、その対応には多大な時間、労力、費用がかかります。

 この事例から、介護施設が個人情報保護のために講じるべき対策は明確です。

⑴ 個人情報保護意識の徹底

第1に、組織全体での個人情報保護意識の徹底です。職員一人ひとりが、取り扱う個人情報の重要性を理解し、その保護に対する高い意識を持つことが不可欠です。定期的な研修や教育を通じて、具体的な取り扱いルールやリスクを共有し、日々の業務に落とし込む必要があります。

先の事例では、職員が私物PCに業務情報を保存しないという基本的なルールが徹底されていなかったことが問題でした。

⑵ セキュリティ対策

第2に、技術的・物理的なセキュリティ対策の強化です。

個人情報が保存されるパソコンやサーバーには、強固なパスワード設定、データの暗号化、ウイルス対策ソフトの導入を徹底すべきです。また、紙媒体の記録についても、施錠可能なキャビネットでの保管、シュレッダーによる適切な廃棄など、物理的なセキュリティ対策を講じる必要があります。先の事例のように、安易な私物デバイスへの保存は厳禁であり、業務で使用する機器のセキュリティ管理を徹底することが重要です。

⑶ 利用目的の明確化とアクセス権限

第3に、個人情報の利用目的の明確化とアクセス権限の厳格化です。

誰が、どの情報を、どのような目的で利用できるのかを明確にし、必要最小限の職員にのみアクセス権限を付与するべきです。利用履歴を記録し、定期的に監査を行うことも不正利用の抑止に繋がります。

⑷ 対応体制の整備

第4に、インシデント発生時の対応体制の整備です。

万が一、個人情報の漏洩や紛失が発生した場合に備え、被害の拡大を防ぐための初動対応、本人への速やかな連絡、関係機関への報告、そして再発防止策の策定といった一連の手順を定めておく必要があります。

4 まとめ

 今後ますます重要となる介護の現場において、個人情報保護への意識と対策をより一層高めていくことが求められます。そのため、弁護士などの専門家に相談しながら、対策を進めていく必要があります。

また、職員への意識づけのためには、個人情報に関する定期的な研修も必要です。

当事務所は、介護・福祉分野に注力した弁護士事務所となっており、個人情報に関する研修も対応可能です。もし施設における個人情報保護について悩んでいらっしゃいましたら、弁護士法人リブラ法律事務所まで、まずはお気軽にご相談ください。

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